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【メルマガ第15回】ポリゴノーラの音階がうまれるまで(1)ドレミの歴史


櫻井 直樹


ポリゴノーラの音階は純正律を基礎にしています。

そこで、純正律がどのように作られているかをはじめにお話しします。

ドレミの誕生の歴史を紐解くと、ピタゴラス(BC582~BC496)にたどり着きます。

ピタゴラスは、例えばドの音が出る1本の弦について2:1に分けるところを駒で区切り、ソの音を作りました(図1)。二番目の駒の左側を鳴らすとソの音が、右側では1オクターブ高いソの音が出ます。ここから、2つのことがわかります。

1つめは、弦の長さを1/2にすると1オクターブ高い音になり、逆に弦の長さを2倍にすると1オクターブ低い音になることです。つまり、弦の長さと音の高さ(周波数)は反比例しています。


2つめは、「ド・ソ・(1オクターブ上の)ソ」を一緒に弾くと、とても心地よく聞こえることです。ソと1オクターブ高いソは、同時に鳴らすとまるで一つの音のように聞こえます。ソはドの弦を2/3の長さにした時の音ですが、こちらも一緒に弾くときれいに響きます。


さらに、ピタゴラスはソの音の弦を2/3にしてレの音を出しました。このレは1オクターブ高いので、弦の長さを2倍にして1オクターブ低いレにします。この方法を12回繰り返して「ド→ソ→レ→ラ→ミ→シ→ファ#→ド#→ソ#→レ#→ラ#→ミ#(ファ)→ド」を作りました。これが『ピタゴラス音律』です。ピタゴラス音律では、[ドとソ]、[ソとレ]のような5度や[ドとファ]など4度の音程は気持ちよく響きあいますが、それ以外は調和しません。


そこで考えられたのが「純正律」で、弦の長さで表すと図2のようになります。



ドが出る弦長を1としたとき、1オクターブ高いドの弦長は1/2となります。弦の長さをドより少しずつ短くしていくと、「ド・レ・ミ・ファ・ソ・ラ・シ・ド」の音階になります。純正律では、ドの弦長を1としたとき、他の音は簡単な分数で表すことができます。

ドを1として“弦の長さ”と“音の高さ”をまとめると、両者は逆数の関係になっています。音階は、数学そのものです。それで以前(第13回)に紹介したイギリスの数学者エリスも心惹かれたのかもしれませんね。


音の高さを数字で表す方法は音階を説明するのに大変便利なので、これを使って「ピタゴラス音律」と「純正律」を並べてみました(表2)。ピタゴラス音律のド・レ・ソは純正律と同じ音高ですが、そのほかでは異なります。もっとも奇異に感じるのは、ピタゴラス音律で「ド→1」としたときに、1オクターブ高い音は「ド→2」とはならず「ド→2.027」となっていることで、これが最大の欠点でもあります。

さて、純正律がピタゴラス音律よりも優れている点は、オクターブが「完全な2」であることだけではありません。例えば[ドミソ]など、ピタゴラス音律では調和しなかった音が純正律ではきれいに響き合い、これを「協和」といいます。協和については、次回にお話しします。

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