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【メルマガ第2号】PAN音階

パンフルートのためのパン音階

小方 厚


ドレミ…という音階は,偶数次・奇数次を問わず,整数倍音 (根音・2 倍音・3 倍音・4 倍音…) をそなえた楽音に最適化されている.ポリゴノーラのように,整数倍音とは別な系列を持つ楽音には,ドレミ…とは異なる音階が存在する.ここでは,ドレミ…とは異なる音階をもうひとつ紹介したい.

管楽器は開管楽器と閉管楽器に分類できる.完全な閉管楽器に偶数次倍音は不在である.2 倍音を持たないから,オクターブを音階の区切りとする必然性もない.このような楽器には周波数3倍区間を 13 音に分割する音階が存在しうる.これがパン音階である.

整数倍音を持つ開管楽器と弦楽器のために不協和曲線を計算すると,純正律のドレミ…が導かれることは,ホームページ「円盤音楽理論」に解説されている.いっぽう,下のグラフは,楽音がを奇数倍音のみ (根音・3 倍音・5 倍音…・13 倍音) を持つという前提で導いた不協和曲線である.


ドレミ…の基である5リミット純正律は,2倍音すなわちオクターブを区切りとし,3倍音と5倍音を材料に作られる.これに倣って,(2倍音を排除し)3倍音を区切りとし,5倍音と7倍音を材料に,13 音から成る7リミットの純正律を作ることができる.その構成音の位置をグラフ上,セント目盛りの上に青い円で示した.

グラフに谷を与える周波数比は構成音となる (ただしグラフで括弧に入れた11/7音と13/5音は,それぞれ11倍音と13倍音まで計算して初めて登場するので,7リミット純正律では現れない).さらにいくつかの音を追加した全 13 音 (I, II, …, XIII) の根音に対する周波数比は,

1, 27/25, 25/21, 9/7, 7/5, 75/49, 5/3, 9/5, 49/25, 15/7, 7/3, 63/25, 25/9,

である.

図の青丸はほとんど等間隔なので,赤丸で示した平均律で近似できる.周波数2倍区間を 12 に等分割する,現行の平均律の場合と同様である.

どのような楽器がこのパン音階に適しているだろう? クラリネットは閉管楽器の代表格だが,実はそのスペクトルは意外に偶数倍音を含んでいる.これに対しパンフルートはほぼ完全な閉管楽器である.この音階をパン音階と名付けた所以である.

弾弦楽器で偶数倍音を得るには,長手方向・弦の中央を「節」とする必要がある.逆に弦の中央を弾けば,偶数音は出ない.このような奏法が可能な弾弦楽器 (とりあえずパンハープと呼ぼう) もパン音階向きである.パンフルートとパンハープによる「管弦楽」の可能性もある.

パンフルートもパンパイプもDIYで作れる.この音階に興味を示してくださるパンフルート奏者もおられる.この音階を実現する計算機プログラムも完成している.今後の発展が期待できるかもしれない.

この純正律・平均律 パン音階は,小方が独自に考案したつもりでいたが,残念ながら1970年代にすでに提案されていた (M.V. Mathews, et al., J. Acoust. Soc. Am. 84 (1988) 1214).