【メルマガ第5回】 櫻井家のおかしな人々(序)

櫻井家のおかしな人々(序)

櫻井 元希

 

 oto-circleのメールマガジンをご購読の皆様。こんにちは。櫻井元希です。 私は関東を中心に、声楽家、そして指揮者として活動しています。「声楽家」というとクラシック音楽を演奏する歌手のことを指しますが、一口に「声楽家」と言っても、そのレパートリーは様々です。


「音楽」の中の「クラシック音楽」

 まず「クラシック音楽」と言った時点で、それより広義の概念である「音楽」から、レパートリーをかなり絞ったことになります。音楽には、世界各地に伝承されている土着の音楽、大衆音楽などありとあらゆるものを含みますが、クラシック音楽というと、一般にヨーロッパを中心に発展していった芸術音楽のことを指します。 ヨーロッパを中心に発展したといっても、特に近代以降は世界中にこの価値観が広まり、日本を含め各地で独特の発展を遂げています。民族音楽や大衆音楽と交流し、結びつくことで「クラシック」の境界は曖昧になってきてはいますが、旋律、リズム、和声を基本とする音楽の構造によってクラシック音楽を大体定義することができるように思います。また五線譜を用いたスコアによって音楽を把握しようとする点もクラシック音楽の大きな特徴です。


「クラシック音楽」の中の「時代区分」

 「クラシック音楽」はこのように世界の音楽全体から見るとほんの1ジャンルに過ぎませんが、この1つのジャンルの中でも、時代や地域によって大きく特徴が異なります。音楽を保存するのではなく、発展させようとしているという点もクラシック音楽の特徴だと思いますが、その「進歩思想」の結果として、時代による差異が生まれてきたと考えることもできるでしょう。 一般にこの、時代による音楽の「発展」をカテゴライズする際、中世ールネサンスーバロックー古典派ーロマン派ー近代ー現代というように時代を区分しますが、私がレパートリーとしているのは主にバロック期以前(1750年頃まで)の音楽です。


世俗音楽と宗教音楽

 クラシック音楽には、時代によるジャンル分けの他に、音楽の内容による区分も存在します。世俗音楽と宗教音楽です。ヨーロッパの音楽ですから、「宗教」というとキリスト教のことです。聖書のテキストを用いた歌や、そうでなくてもキリスト教的な内容を持つテキストを用いた歌はこれに含まれますが、多くのオルガン音楽も、典礼に用いられた音楽ということで「宗教音楽」に含むことができます。世俗音楽はそれ以外のクラシック音楽を指し、世俗的なテキストを用いたオペラや歌曲、そして多くの器楽曲はこちらに含まれます。  私がレパートリーとしているのは宗教音楽の方で、かつ声楽曲ですので、私は「バロック期以前のキリスト教声楽作品をレパートリーとする声楽家」ということになります。


ニッチ音楽家

 特に日本では「音楽」の中でも「クラシック音楽」は敷居が高いとか、ハイソなイメージとかがあって、なかなか一般に浸透しているとは言い難いと思います。その「クラシック音楽」の中でも、一般の方にイメージされやすいのはオペラや交響曲など、主に古典派以降の音楽です。クラシック音楽のメインストリームである古典派以降の音楽を排除し、その上オペラなどの世俗音楽を排除したという時点で「こいつはニッチなことやっとるんやな」ということがおわかりいただけたかなと思います。 しかしですね、中世からバロックまでと言うとですね、グレゴリオ聖歌が記譜されはじめた10世紀頃から18世紀まで、約800年間です。その間にヨーロッパ中で作曲された宗教声楽作品全てを守備範囲に置いているわけで、私としては十分に大風呂敷を広げているつもりなのです。実際これらのレパートリー全てを一生の間に演奏することは不可能ですし、まして深く研究しようとするならなおさらです。


 にもかかわらず日本ではまだこの業界はニッチな業界なので、演奏会をやればやるほど貧乏になるという状況です。300席を満員にしても赤字、そしてまず満員にはなりません(ただの愚痴)。

というところで、私が実際どういうことをやっているか、動画を貼っておきますので是非ご覧ください。https://youtu.be/pIQuZz2kZ8w


また、私の主催するSalicus Kammerchorという室内合唱団のページには他にもいくつか動画が上がっているので、こちらもよろしければ覗いてみてください。https://www.salicuskammerchor.com/videos


この団体は、グレゴリオ聖歌の歌唱法をJ. S. バッハの音楽にも生かすというコンセプトで活動しています。


続き

植物学者(?)の父声明パフォーマー(?)の叔母 は2月配信予定の「櫻井家のおかしな人々(破・急)」に掲載されます。お楽しみに!


著者:櫻井元希 プロフィール http://genkisakurai.com  広島大学教育学部第四類音楽文化系コース、東京藝術大学音楽学部声楽科を卒業。同大学院古楽科をバロック声楽で修了。声楽を枝川一也、益田遙、河野克典、寺谷千枝子、櫻田亮の各氏に、バロック声楽を野々下由香里氏に、合唱指揮をアレクサンダー・ナジ氏に、指揮を今村能氏に、古楽演奏を花井哲郎氏に、ヴォイストレーニングをVocology in Practiceの小久保よしあき氏に師事。 これまでに、ヘンデル「メサイア」バッハ「ロ短調ミサ」「教会カンタータ」「マタイ受難曲」モーツァルト「レクイエム」などのソリストを務める。   Salicus Kammerchor、Ensemble Salicusを主宰。フォンス・フローリス古楽院講師。東京藝術大学バッハカンタータクラブ2013-2015年度演奏委員長。ヴォーカル・アンサンブル アラミレ、リーダー。The Cygnus Vocal Octet、ジャパンチェンバークワイア、ヴォーカル・アンサンブル カペラ、古楽アンサンブル コントラポント等に所属。




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